ZenoKey: 入力意志と入力対象の独立センシングによる高速入力デバイス

0.01 sの差で勝敗が決するeスポーツ産業の発展に伴い,ユーザのデバイス操作能力をコンテンツに反映する入力が高速なインタフェースが求められている. 既存のキーボード入力デバイスより高速な入力が可能なラピッドトリガーキーボードは,キーの押し込み量が減少に転じることを入力の判断条件にすることで,キー入力に必要なキーストロークを浅くすることを実現している.既存のキーボードの構造ではキーストロークを浅くすることはできるが,キーを押し下げる過程を削減することはできない.
本研究では,eスポーツにおけるキー入力システムからキーを押し下げる過程を取り除き,入力操作を高速化したインタフェースを提案する.指が動く直前に生じる筋電位に基づいて入力意志を判別し,キー入力時の指圧の変化に基づいて入力対象となるキーを判断することで,キーの押し込みが完了する前に入力する手法を提案する.入力が高速化されたことによって発生する入力完了感と操作のズレの影響を低減するために,キーから指腹へと力触覚フィードバックを与えることで,ユーザに触覚を通した整合性の高い入力感と操作感を提示する.
高速入力システムの入力速度を検証するために,1度のキー押し込み入力で提案システム入力とメカニカルキー入力の2つの入力を同時に取得し,入力速度の差を調査する実験を行った結果,メカニカルキー入力よりも約0.03 sの入力の高速化を実現したことが示された.力覚提示システムがユーザの入力に及ぼす影響を調査するために,キー上部に加わる圧力センサによる入力システムを用いて20回入力し,力覚提示あり条件と力覚提示なし条件で入力された回数を比較する実験を行った結果,力覚提示システムが過入力を低減し,入力精度を向上させることが示された.